不妊治療用語解説

人工授精(AIH)とは?体外受精との違いと方法や費用について解説します。

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現在、不妊治療されている方へ。

タイミング法で妊娠できなかったときに、人工授精(artificial insemination by husband:AIH)を勧められたけど、体外受精と一体何が違うの?費用はどのくらいかかるの?

と思っていませんか?

この記事では、人工授精の方法の他に「体外受精との違いは?」「人工授精する人はどんな病気の人?」「費用はどれくらいかかるの?」「一回の治療の成功率(妊娠率)は?」について解説していきます。

1. 人工授精とは?

これまで、不妊症に対する治療が発展してはきましたが、基本的に妊娠する方法(不妊治療)は3種類に大別されます。

自然妊娠、人工授精、生殖補助医療(体外受精や顕微授精のこと)です。

ここでは人工授精について図を交えてわかりやすく解説します。

1-1. 人工授精の方法

人工授精は、ものすくごく簡単に言えば、「元気な精子を選んで、スポイトのようなもので子宮の中、あるいは卵管などに直接注入する方法」です。

通常の妊娠では、精子は、「腟内→子宮頸管部→子宮内→卵管間質部→卵管峡部→卵管膨大部」までの長い道のりを旅しなければ受精できません。

人工授精では、女性の排卵時期をエコーでの卵胞チェックや採血、基礎体温などによって正確に割り出します。

排卵がうまくできていない女性には排卵誘発剤を使用する場合もあります。

そうして排卵日を特定できたら、排卵前日あるいは排卵当日に、病院にきてもらいます。

男性の精子を採取し調整(精子以外の不純物を取り除く)しておきます。↓画像はスイムアップ法という最も基本的な精子調整方法です。

そして調整した精子を子宮内に注入します。

これにより精子は通常の妊娠よりも長い道のりをたどる必要がなく、受精場所(卵管膨大部)まで行くことができます。

人工授精自体には精子注入時の感染以外には特に副作用はありません。

しかし、人工授精を行う時には排卵誘発剤を使用することも多いので、排卵誘発剤による副作用(卵巣過剰刺激症候群、多胎妊娠など)は気をつけたいところです。

それでは、不妊治療病院での人工授精の流れをおさらいしてみましょう!

①生理が来たら治療開始。自然に、あるいは排卵誘発剤を使って卵胞を育てます。

②卵胞が育ってきたら(エコーや尿検査で確認します)、排卵を起こす薬hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン human chorionic gonadotropin)を注射します(hCGを注射すると36-40時間で排卵が起こります)。

hCGを注射せずに自分の力で排卵していただく場合もあります。

③男性には排卵日前の2-3日は禁欲してもらいます。

④hCG注射後、36時間で人工授精を行います。精子は採取から30分以内に調整して、90分以内に子宮内に注入します。

 

体外受精との違いについてですが、体外受精とは、卵子と精子を文字通り「体外」で受精させ、受精卵を培養して子宮へ戻す治療のことを言います。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください!→体外受精の流れについて

 

1-2. 人工授精はどんな人に必要か

先にも述べた通り、人工授精とは何も特殊なことをしているわけではありません。精子が子宮の中に侵入する手順を省いただけのことなのです。

だから、子宮の中に放たれた精子は、自分の力で卵管膨大部までたどり着かなくてはならず、卵管が閉じていたり、そもそも排卵していなければ妊娠はできません。

この項では人工授精が有効と考えられる病気について説明していきます。

(1)男性因子からみる、人工授精の適応

①精子や精液の量的、質的な異常

文字通り、精子数が少なかったり、精子の運動が悪かったりする場合のことです。

人工授精が有効な精子数は1000万以上と言われています1)ので、もし射出精液中の精子数が1000万よりもさらに少なければ、体外受精などの生殖補助医療に進んだ方が良いと考えられます。

また、当然ですが正常形態の精子が多い方が妊娠しやすい2)と言われています。

ただし、精子の運動率や精子数は、男性側の体調や食生活などでも左右されやすく、最低でも2回以上は精液検査を行うべきと言われています。

2回以上の精液検査で、異常があれば人工授精の適応となります。

 

②射精障害、性交障害

タイミング治療などで、排卵日にセックスをしなければいけないという心理的ストレスから、陥ることが多いとされています。

また刺激が強い誤ったマスターベーションにより、腟内での射精ができない場合も人工授精の適応と言えます。

(2)女性因子からみる、人工授精の適応とは?

女性側の原因としては子宮頸管因子が挙げられます。

子宮頸管部には精子が腟から子宮内へ進むのを補助するために、子宮頸管粘液が分泌されています。

この粘液がうまく分泌されなかったり、分泌されても子宮頸管粘液の中に精子の動きを止めてしまうような物質が入っていたりする場合(抗精子抗体と言い、不妊症検査で採血で分かります)は、人工授精の適応となります。

子宮頸部円錐切除術(子宮頸がん、子宮頸部異形成の時に行われる手術)の影響で子宮頸部が狭くなってしまう場合があります。この場合も人工授精の適応と言えます。

 

(3)その他
不妊症の原因が検査してもわからず、タイミング治療をしても妊娠しない場合は、次なるステップとして人工授精を行います。

 

1-3. 人工授精の費用の目安

人工授精の費用の目安は1万-3万円程度です。

病院間であまり値段に違いはないです。

タイミング治療、人工授精、体外受精、それぞれの1回あたりの治療費用を比較してみます。

タイミング治療 人工授精 体外受精や顕微授精
費用 1万円前後 1-3万円 30-100万円

タイミング治療は保険適用され、診察費用、腟洗浄、排卵日特定のための超音波検査などを含めて1万円前後です。

排卵誘発剤を使用した場合にはさらに1万-5万円ほどの料金がかかります(FSH製剤などの価格が高い排卵誘発剤を使用した場合に高額となりやすい)。

人工授精は保険適用がなく、自費での治療となります。人工授精のみであれば1-3万円ですが、一般的には人工授精を行う時に排卵誘発剤も使用しますので、その分費用は上乗せされます。こちらも価格が高い排卵誘発剤を使用すると総額6-8万円となる場合があります。

体外受精や顕微授精も自費治療となり、費用は30-100万円と病院によって大きな幅があります。東京や大阪など、都市圏で値段が高い傾向にあります。

2. 人工授精の治療限界

人工授精を何度もしているけれど、妊娠できない。

そんなとき、どこまで続けるか、体外受精に踏み切るのか、とても悩むところです。

ここでは、人工授精によって、どのくらい妊娠するのか?、いつになったら体外受精にステップアップしたら良いのかを解説します。

2-1. 人工授精で妊娠する確率

人工授精を一回行なった場合の妊娠率はどのくらいでしょうか?一般的には人工授精一回あたりの妊娠率は5-10%と言われています。年齢が高いほど妊娠率は低くなります。

下表に年齢別の複数回人工授精を行った後の最終的な妊娠率を示します。3)

 

年齢 妊娠率
24歳以下 21.43%
25-29歳 12.93%
30-34歳 13.53%
35-39歳 13.27%
40歳以上 5.04%

治療回数別の妊娠率を示します。4)(図はhttp://www.jaog.or.jp/lecture/10人工授精/より抜粋させていただきました。)

 

2-2. 人工授精は基本的に6回まで!?

上のグラフを参考にすると、人工授精で妊娠する人の9割以上が、人工授精6回目までに妊娠しています。

そのため目安として6回行い、妊娠しなければ体外受精などのより高度な不妊治療へ進むことが一般的と考えられます。

全ての人が人工授精は6回までといわけではありませんが、目安として6回という数字を提示しました。

実際には、年齢が高いほど残された時間も短いため、人工授精3-4回で体外受精へステップアップすることもあります。

逆に、経済的、倫理的事情からカップルによっては体外受精へのステップアップに抵抗がある場合もあり、そういう時は、データを説明した上で、納得してもらって、人工授精を7回以上行う場合もあります。

 

まとめ

今回は人工授精について説明しました。

費用は1-3万円で、人工授精一回あたり妊娠率は5-10%です。

人工授精で妊娠できる人はトータル約20%ほどですが年齢が高いほど妊娠率は低いです。

人工授精で妊娠できる人の9割以上が、人工授精6回目までに妊娠できている点から、体外受精などの生殖補助医療ステップアップの目安は人工授精6回までと考えます。

 

 

参考文献

1) Van Voorhis BJ, et al: Effect of the total motile sperm count on the efficacy and cost-effectiveness of intrauterine insemination and in vitro fertilization. Fertile Steril 2001;75:661-668

2) Van Waart J, et al: Predictive value of normal sperm morphology in intrauterine insemination(IUI): a structured literature review. Hum Reprod Update 2001;7:495-500

3) Wainer R, et al: Influenceof the numberof motilespermatozoainseminatedand of their morphologyon the success of intrauterine insemination.Hum Reprod 2004; 19: 2060-2065

4) 米田佳孝、櫛野鈴奈、池田千秋ほか:当院における子宮内精子注入法(人工授精)1816周期の臨床的分析.第141回日本生殖医療学会関東支部会.2010

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