不妊治療用語解説

卵巣過剰刺激症候群について

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排卵誘発剤を使用する不妊治療中に腹痛や嘔気はありませんか?

もしかすると卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)の症状かもしれません。

今回は排卵誘発剤の代表的な副作用「卵巣過剰刺激症候群(これ以降、この記事ではOHSSと呼びます)」を説明していきます。

 

1. OHSSの病態と症状

ここではOHSSがどのようにして起こるのか、そして症状は何があるのかを解説していきます。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、その名前の通り、排卵誘発剤で卵巣を過剰に刺激しすぎて起こる副作用です。下図にOHSSの病態を示しました。

それぞれの症状について、より詳しく説明していきます。

1-1. 腫大した卵巣の捻転

排卵誘発剤で卵胞が大きくなり過ぎて卵巣自体も大きくなります。

たくさんの卵胞が大きくなり、卵巣が増大することによって卵巣が根元でねじれてしまいます。

すると腹痛が起こり、ねじれを治さないと最悪の場合、卵巣が壊死してしまうこともあります。

1-2. 脱水による血栓症

卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用を受けて、卵胞の中にある顆粒膜細胞からエストロゲンが分泌されます。

FSHが過剰に投与されると(排卵誘発剤をたくさん使用すると)、エストロゲンもたくさん分泌されてしまいます。

エストロゲンは身体の中で血栓(血の塊)を作りやすくする作用があります。

さらに、卵胞からはエストロゲン以外にも、血管透過性を亢進(血管から水分が抜けやすくなる)させるような信号が送られます。

エストロゲンの血栓形成作用と、血管内の水分不足で脱水が起こり血液がドロドロになるため、ダブルの作用で血栓ができやすくなってしまいます。

1-3. 胸水、腹水

卵胞からは血管透過性を亢進させるような信号が送られます。(つまり血管から水分が外に染み出しやすくなるわけです)

この作用で血管内の水分が漏れていき、肺やお腹の中に染み出していき、肺やお腹の中に水が溜まります(胸水、腹水が溜まる)。すると胸水で呼吸困難となったり、腹水で気持ち悪くなります。

胸水、腹水によってお腹が膨れる、気持ち悪くなる、腹痛、呼吸困難などの症状が出現します。

重症化すると死亡する例も報告されています。

2. OHSSになりやすい人と、重症度別治療方法

2-1. OHSSになりやすい人

実は「OHSSになりやすい人」がいます。それは、排卵誘発剤を使う前にたった5つのことを確認するだけでチェックできます。

ここでは、OHSSになりやすい人を見極めるための「排卵誘発剤を使う前に確認すること5つ」について解説します。

OHSSになりやすい人は

①年齢が若い人(35歳以下)

②やせ型の人

③多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言われたことがある人

④卵巣予備能(妊娠できる卵子がどれくらい残っているか)が高い人

⑤OHSSになったことがある人

です。

①年齢が若い人(35歳以下)

年齢が若い人は、その分卵巣も若いため、排卵誘発剤に反応しやすく、少しの投与でたくさんの卵胞が育ってしまう可能性があります。

②やせ型の人

一般的に「やせている」人はBMI18.5未満とされています。

※BMIとは「Body Mass Index」の略で、カラダの大きさを表します。体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値です。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

下表にBMI18.5の人の身長と体重の大まかな目安を載せます。自分の身長と体重を比べてみましょう。この数値より体重が少なければOHSSになりやすい人です。

身長 体重(BMI18.5とした場合)
165cm 50.4kg
160cm 47.4kg
155cm 44.4kg
150cm 41.6kg

 

③多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言われたことがある人

多嚢胞性卵巣症候群とは、簡単に言うと、卵胞がたくさんできすぎて、排卵しにくくなって定期的な生理が来ない病気です。

多嚢胞性卵巣症候群は不妊症でもよく見かける病気なので、他の項で詳しく解説します。

過去に多嚢胞性卵巣症候群と言われたことがある人は、もともと発育が不十分な卵胞がたくさんあり、排卵誘発剤の刺激でそれら卵胞が育ってしまうためOHSSになってしまいます。

 

④卵巣予備能(妊娠できる卵子がどれくらい残っているか)が高い人

卵巣は年齢が上がるほど、卵子の質、量ともに低下していきます。

卵巣に残っている卵子の数と質が妊娠できるかどうかを左右しますが、このうち、卵子の残り数を卵巣予備能と表現します。

「卵巣予備能が高い」ということは卵子が多く残っている、ということです。

「卵巣予備能が低い」ということは卵子が少なくなってしまっているということです。

「卵巣予備能」はAMHと、月経3日目の卵巣内の胞状卵胞数(Antral follicle count:AFC)で測定します。

AMHは発育卵胞から分泌されるホルモンです。卵巣内にどのくらい卵子が残っているかを反映しています。採血で測定できます。

AMHが3.36ng/ml以上あればOHSSになりやすいとされています。もし以前に採血したデータがあれば、自分のAMHを確認しておきましょう!

胞状卵胞数(Antral follicle count:AFC)とは月経3日目前後にエコー検査で確認できる卵巣内の胞状卵胞の個数のことです。

胞状卵胞数が14個以上あればOHSSになりやすいとされています。

⑤OHSSになったことがある人

過去に排卵誘発剤でOHSSになったことがある人はもう一度なりやすいとされています。

 

ここまででOHSSになりやすい人の特徴5つを詳しく説明してきました。

もし当てはまる項目がある場合には、排卵誘発剤の使用中はOHSSの症状が出現しないか、自分自身でも注意深く観察していきましょう。

 

2-2. OHSSの重症度別治療法

OHSSは自覚症状で軽症、中等症、重症かを判断できます。

ここではOHSSの重症度を見極めるために、自分で確認できる自覚症状と、医療機関でチェックすべき3つの項目を紹介します。

 

軽症 中等症 重症
①自覚症状 お腹が膨れる 気持ち悪い、吐いた お腹が痛い、呼吸が苦しい
②胸水、腹水 骨盤内にとどまる腹水 上腹部までに及んだ腹水 腹部全体の腹水、あるいは胸水
③卵巣の大きさ 6cm以上 8cm以上 12cm以上
④採血データ すべて正常 いずれかの項目で異常 Ht≧45%、WBC≧15000/mm3、Alb<3.5g/dl

 

①自覚症状

OHSSでは4つの代表的な症状(お腹が膨れる、嘔気、嘔吐、腹痛、呼吸困難)が出現しますが、その症状によって自分が軽症なのか、重症なのかを大まかにチェックできます。

自覚症状があれば、早めにかかりつけ医を受診して②-④を評価してもらうようにしましょう!

②、③はエコーで検査することができます。④は採血すれば結果がわかります。

これらで自分の重症度を把握して、適切な治療を受けましょう!

 

(2)重症度分類に応じた適切な治療

OHSSの重症度を把握したら治療に移りましょう!治療方法は「軽症、中等症」と「重症」で違います。

軽症、中等症であれば外来で診ることが一般的です。血管から水分が出ているのでこまめな水分補給が大事です。

また、エコーでお腹の中の水(腹水)や、卵巣が大きくなっていないかを慎重に診てもらいます。採血検査も細かく行って、血液が濃くなっていないか、血栓ができていないかを確かめます。

自覚症状が悪くならないかは、自分でチェックできますので、ぜひ注意して診てください。

症状が良くなってこれば、そのまま治療完了となります。次の周期で排卵誘発剤を使用する場合には、排卵誘発剤の量を減らすなど、医師と対応を相談しましょう。

症状が悪くなるのであれば重症と判断し入院となります。

重症と判断される場合や、軽症や中等症で様子を診ていても改善しない場合は入院して治療をしていきます。

症状に応じた治療となりますが、まずは血管に水分を補うことが先決です。点滴をして水分補給をする他、25%アルブミン製剤(血管に水分を引き込むような作用がある点滴)を使用して治療します。

腹痛があれば、卵巣がねじれていると考え、手術(可能であれば腹腔鏡が望ましい)でお腹の中を確認しにいきます。ねじれがあれば手術で元に戻します。

呼吸困難や嘔気嘔吐があって、超音波やCTなどの画像検査で肺やお腹の中に水分がたまっているのを確認できれば、針を刺して、水分を抜きます(胸水穿刺、腹水穿刺)。

 

 

まとめ

今回はOHSSについて、病態と症状、なりやすい人と治療について解説しました。

重症度については自覚症状が非常に重要であり、自分でも判断できることなので、注意してみてみましょう。

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