不妊治療用語解説 婦人科一般

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?検査と治療を解説します。

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)と診断されたあなたへ。

現在、不妊治療クリニックに通院していてPCOSと診断されたけど、どんな病気なのか実際にはよくわからないですよね。

そして、多嚢胞性卵巣症候群の人が妊娠する上で、どんな治療が必要になるか知りたいと思いませんか?

今回は多嚢胞性卵巣症候群についてわかりやすく解説します。

 

この記事を読むとどうなるか
・多嚢胞性卵巣症候群について診断基準、症状がわかる。
・多嚢胞性卵巣症候群の治療方法がわかる。

1. 多嚢胞性卵巣症候群について

1-1. 多嚢胞性卵巣症候群とは?

多嚢胞性卵巣症候群とは、一言でいえば、「卵巣にたくさんの嚢胞(風船のようなもの)ができてしまい、うまく排卵しなくなり、月経がバラバラになる病気」です。

いまだに、多嚢胞性卵巣症候群の病態や原因については、あまりわかっていません。そのため「症候群」がついており、様々な病態を含んでいると考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群の人の特徴として、肥満体型、男性化(毛深い、ニキビ顔など)、インスリン抵抗性(糖尿病やメタボリックシンドロームの人)などがありますが、中には痩せていたり毛が薄い人もいて、一概にはまとめることができません。

1-2. これを満たせば多嚢胞性卵巣症候群!3つの診断基準

診断基準その①月経不順

ここで言う月経の異常とは、無月経(月経が来ない)、希発月経(月経と月経の間隔が39日以上)、無排卵周期症(月経の様な出血があっても、排卵を伴っていない状態)のことです。

すごく簡単に言えば、月経が不順で、月経と月経の間隔が長い(39日以上来ない)人が当てはまります。

例えば「あるときは30日で月経が来たけど、あるときは60日間来なかった」と言う場合も多嚢胞性卵巣症候群の可能性があると言えます。

診断基準その②多嚢胞性卵巣

多嚢胞性卵巣はエコーで検査できます。

卵巣にたくさんの卵胞があり、少なくとも片方の卵巣で2-9mmの卵胞が10個以上あるものを「多嚢胞性卵巣」とします。

診断基準その③男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常

ホルモン値は採血で調べます。

排卵誘発剤や女性ホルモン薬を使っていない時に、エコーで10mm以上の卵胞がないことを確認して採血します。

男性ホルモン(テストステロンやアンドロステンジオン)は正常値上限を超えた場合に高値と判定します。

LH(黄体形成ホルモン)>FSH(卵胞刺激ホルモン)の場合にも異常と判断します。

 

以上の3つの基準を全て満たした場合に多嚢胞性卵巣症候群と診断します。

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準3つのまとめ

①生理がちゃんと来ない
②エコーで多嚢胞性卵巣
③採血で男性ホルモン高値、またはLH高値かつFSH正常

 

1-3. 多嚢胞性卵巣症候群だとどんな症状がでる?

多嚢胞性卵巣症候群の主な症状は「月経がバラバラになる」というものです。

他に普段の生活に困るような症状が出ないため、妊娠を希望しない限りはなかなか病院に行く機会がないかもしれません。

しかし、実は月経がちゃんと来ないことが危険な病気につながっているのです。

 

問題点その①月経がこない、排卵ができない→不妊症

多嚢胞性卵巣症候群の一番の問題点はちゃんとした月経が来ず、排卵もできていないということです。

排卵ができていないので、当然不妊症となります。

 

問題点その②肥満と男性化(毛深い、ニキビなど)

多嚢胞性卵巣症候群は肥満の人に多いとされています。ここで言う「肥満」とはBMI25以上の人を指します。

※BMIとは「Body Mass Index」の略で、カラダの大きさを表します。

体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値です。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

下表にBMI25の人の身長と体重の大まかな目安を載せます。自分の身長と体重を比べてみましょう。この数値より体重が重ければ「肥満」と言えます。

身長 体重(BMI25とした場合)
165cm 68.1kg
160cm 64kg
155cm 60.1kg
150cm 56.3kg

さらに、多嚢胞性卵巣症候群では男性ホルモンが普通の女性より多く分泌されていますので、体が男性化します。ただし、男性化徴候の症状が強くでる人は日本人には少ないと言われています。

 

問題点その③排卵誘発剤に過剰反応

卵巣にたくさんの嚢胞があるため、排卵誘発剤を使用すると過剰反応し、場合によっては卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠になってしまいます。

 

問題点その④糖尿病

多嚢胞性卵巣症候群の人は「インスリン抵抗性」があるとされています。

「インスリン」とは膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモンです。

「インスリン抵抗性」があるというのは、インスリンが分泌されても血糖値が下がりにくい体質ということです。

そのため、糖尿病や高コレステロール血症、メタボリックシンドロームなどになりやすいとされています。

 

問題点その⑤子宮体がんのリスク

正常な生理がきていれば、子宮内膜は薄→厚→薄→厚を繰り返すはずです。

多嚢胞性卵巣症候群では生理がこないため、子宮内膜は

厚→厚→もっと厚い→もっともっと厚い→もっともっともっと厚い→....

のようにどんどん分厚くなってしまいます。

分厚くなった子宮内膜を放っておくと、やがて子宮内膜増殖症(子宮体がんの前の病変。さらに進行すると子宮体がんへと発展する可能性がある)や、子宮体がんが発生します。

多嚢胞性卵巣症候群の問題点まとめ
①不妊症の原因となる
②肥満と男性化
③排卵誘発剤に反応し過ぎる
④糖尿病になりやすい
⑤子宮体がんになる可能性あり

2. 多嚢胞性卵巣症候群の治療

多嚢胞性卵巣症候群の治療は妊娠を予定している人と、そうでない人で内容が変わるため、ここでは妊娠希望の有無でどう治療内容が変わるかを解説します。

2-1. 妊娠を望んでいない人の治療法は?

治療は肥満があるかないかで違います。

肥満がある場合、2-6ヶ月の期間で体重の5-10%の減量を目標とします。肥満がない人や、減量しても排卵が起きず、生理が整わない人はピルやホルモン剤で生理を調整していきます。

2-2. 妊娠を望んでいる人の治療法は?

最初は肥満がある人は減量や運動を行います。

妊娠予定がない人と同じように、2-6ヶ月の期間で体重の5-10%の減量を目標とします。

肥満がない人や、減量しても排卵が起きない人にはクロミフェンやレトロゾールといった排卵誘発剤を使用します。

それでも排卵しない、妊娠しない人には、クロミフェンやレトロゾールよりも排卵作用が強いFSH製剤を使用します。

ただし、多嚢胞性卵巣症候群の人は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすいため、FSHを少しずつ投与して、慎重に卵胞の大きさを見ていく「FSH低用量漸増法」という治療をします。

それでも排卵しない、妊娠しない人は手術療法を行います。具体的には腹腔鏡下卵巣多孔術(laparoscopic ovarian drilling:LOD)と呼ばれます。

卵巣に複数の穴を開けて、排卵しやすい状態にする手術です。

術後排卵率は70~90%、妊娠率は30~70%程度とされ1)、非常に有効な治療法の一つです。

また、FSH製剤と比較して排卵率や妊娠率に差がないのに、多胎率は卵巣多孔術の方が低いとされるデータ2)も出ており、副作用が少ないという点でも有用とされています。

もし、腹腔鏡下卵巣多孔術でも排卵や妊娠に至らない場合には、もう一度クロミフェンやFSH製剤などの排卵誘発剤を使用してみます。

これは、腹腔鏡下卵巣多孔術により、手術前よりも排卵しやすくなっているため、排卵誘発剤を組み合わせることで、排卵、妊娠する可能性があるからです。

それでも妊娠できなければ体外受精へとステップアップします。

 

まとめ

今回は多嚢胞性卵巣症候群について解説しました。

主な症状は生理不順と不妊症ですが、放っておくと、とても怖い病気です。

ぜひ自分の症状をチェックして、早めに治療してくださいね!

 

参考文献)

1) Campo S. Ovulatory cycles, pregnancy outcome and complications after surgical treatment of polycystic ovary syndrome. Obstet Gynecol Surv. 1998 May;53(5):297-308

2)Farquhar C et al. Laparoscopic 'drilling' by diathermy or laser for ovulation induction in anovulatory polycystic ovary syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2007 Jul 18;(3)

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