不妊治療用語解説

排卵誘発剤の種類と副作用について

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排卵誘発剤の種類と副作用について知りたい方へ

最近、不妊治療を始めたところだけど、排卵誘発剤が何種類もあってよくわからない、病院や医師によって使い方が違っててついていけない、副作用や費用はどのくらいかかるか知りたい、と考えていませんか?

本記事では下記の内容を解説します。

 

1. 代表的な排卵誘発剤3種類を紹介

ここでは排卵誘発剤として、主に使用されている薬を3種類紹介します。
基本的に、どの病院でもこれら3種類の排卵誘発剤を組み合わせたり、量を調整して使っています。

1-1. クロミフェン /シクロフェニル

排卵誘発剤の最も基本的なお薬で、飲み薬です。クロミフェンの作用を下図を用いて解説します。


①クロミフェンは脳(視床下部)にエストロゲンが少ないと錯覚させます。

②すると、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、下垂体から黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌も増加します。

③LH、FSHの増加を受けて卵胞が育つようになります。

クロミフェンは卵胞を育てる作用を発揮する代わりに、抗エストロゲン作用も併せ持っています。

エストロゲンは女性ホルモンであり、精子が子宮内に入りやすいように子宮頸管粘液を増やしたり、赤ちゃんが着床できるように子宮内膜を分厚くしたりする作用があります。

クロミフェンはエストロゲンに対抗する作用もあるため、子宮頸管粘液が減少したり、子宮内膜が薄くなったりします。

子宮頸管粘液が減少すると精子が子宮の中に進みにくくなり、子宮内膜が薄くなると赤ちゃんが子宮に着床しにくくなります。

クロミフェンは、卵胞を育てて排卵をさせる効果がある一方で、子宮には妊娠しにくくなる作用をもたらします。

そのため、クロミフェンの排卵率は約60-70%ですが、妊娠率は20%程度とされています。

クロミフェンは月経5日目から5日間内服します。1日あたり50mgで開始するのが一般的ですが、50mgで排卵しなければ1日あたり100mgまで増量します。

クロミフェンに似た薬剤でシクロフェニルがあります。作用はクロミフェンとほぼ同様です。排卵させる力が弱い代わりに子宮頸管粘液の減少や子宮内膜の菲薄化が少ないとされています。

1-2. レトロゾール(アロマターゼ阻害薬)

レトロゾールは、もともと乳がんの治療薬として開発された飲み薬です。

乳がん細胞は女性ホルモンであるエストロゲンの作用で増殖します。そこでエストロゲンを抑える薬を開発し、治療薬にしたという歴史があります。

エストロゲンを作るためにはアロマターゼという酵素が必要です。

①レトロゾールは、アロマターゼの作用を妨げることでエストロゲン産生を抑えます。

②すると脳はエストロゲンが足りないと考えてゴナドトロピン分泌を増加させ、LH、FSH分泌が増加して卵胞が発育します。

クロミフェンとの違いは、子宮頸管粘液減少や子宮内膜が薄くなる作用がないことです。

レトロゾールにより体中のエストロゲンが少ない状況に置かれます。

するとエストロゲンに対する感受性が高くなり、少しのエストロゲンでも子宮が反応するようになります。

レトロゾールを飲み終わった後にエストロゲンが少しでも分泌されれば、感受性の高まった子宮は頸管粘液分泌を増やし、赤ちゃんの着床に向けて子宮内膜を厚くします。

注意点としては、もともと乳がんの治療薬として開発された薬であるため、まだ排卵誘発剤としての承認が国から下りていないことです。

そのため排卵誘発剤として使用する場合には適応外使用という形での処方となってしまいます。

奇形を誘発するという点については多くの論文で研究されており、現在までのところ、レトロゾールにより奇形発生率が高まるとする証拠はありません。

また、多くの論文で排卵率や妊娠率がクロミフェンと同等あるいはそれ以上とする結果が出てきています。

レトロゾールは生理5日目から1日2.5mgを5日間内服します。2.5mgで排卵しなければ1日7.5mgを5日間まで増量可能です。

 

1-3. HMG製剤/FSH製剤

卵胞の発育は視床下部ー下垂体ー卵巣のホルモンにより調節されています。ゴナドトロピン療法は、下垂体から出るホルモンをhMG製剤やFSH製剤で直接補うことで卵胞を育てる治療法です。

卵胞刺激ホルモンを直接補うということで、効果は強く、排卵率も高いです。

しかし、クロミフェンやレトロゾールより価格が高く、投与量の調整がやや難しく、量が多すぎた場合には強い副作用が出たりもします。

LH、FSHを療法含むhMG製剤と、FSHのみを含むFSH製剤があり、どのホルモンが異常で排卵障害が起きているかによって使い分けています。

ゴナドトロピン療法に用いる注射薬はいろいろな名前の薬が発売されています。

LHを取り除いた製剤をFSH製剤と呼んでいます。

hMG製剤、FSH製剤は、閉経後の女性の尿から作られているため、未知の病原体混入の可能性が指摘されています。

遺伝子組み換えFSH製剤(リコンビナントFSH:recFSH)は病原体混入の可能性はありませんが、価格が高めという弱点があります。

 

ゴナドトロピン療法は卵胞刺激ホルモンを直接補うことで卵胞を育てる治療ですが、ときに、卵胞を刺激し過ぎてしまう場合があります。

そうならないように、現在ではFSH低用量漸増法という投与法が主流となっています。

簡単に言えば、少ない量からFSHを始めて、とっても慎重に量を調整して増やしていく方法です。

生理5日目からFSH50単位を毎日注射し、2週間経過した時点で増量判定を行います(この2週間の間にも卵胞径は適宜エコーでチェックします)。

エコーでの卵胞径が10mm以上なら、FSH50単位で十分であると判断し、そのままの量を続けます。

卵胞径が10mm未満なら初期投与量の1/2(FSH50単位が初期投与量なので25単位)を増加させて次の週を毎日投与し続けます。

それからは卵胞径が10mm以上になるまで毎週増量判定を行い、必要に応じてFSH投与量を増加していきます。

卵胞径が10mm以上となったら、1日2mmずつ大きくなるので、卵胞径を適宜測定していき、卵胞径が18mm以上となった時点でhCG製剤5000単位を注射します。

大きさ16mm以上の卵胞が4個以上ある場合は卵巣過剰刺激症候群を予防するためにもhCG注射を中止します。

hCG5000単位を注射後、24-36時間で排卵が起こります。もし体外受精を行う場合には排卵後の黄体機能不全を予防するためにプロゲステロンで黄体機能を補充します。

 

このように低用量漸増法は投与方法がやや複雑ではありますが、少しずつ卵胞を育てることで卵巣過剰刺激症候群を予防でき、より安全に排卵誘発ができる方法となっています。

 

2. 排卵誘発剤の副作用

排卵誘発剤を使用する際の代表的な副作用として、卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)と多胎妊娠があります。

ここでは卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠、また、クロミフェン、レトロゾール、hMG/FSH製剤それぞれに特徴的な副作用について説明します。

2-1. 卵巣過剰刺激症候群

その名前の通り、排卵誘発剤で卵巣を過剰に刺激しすぎて起こる副作用です。下図に卵巣過剰刺激症候群の病態を示しました。

細かく解説していきます。

①排卵誘発剤で卵胞が大きくなり過ぎて卵巣も増大

卵巣が増大することによって卵巣の根元でねじれてしまい、腹痛が起こる場合があります。ねじれを治さないと卵巣が壊死してしまうこともあります。

②たくさんできた卵胞から女性ホルモン(エストロゲン)が分泌され過ぎてしまう

エストロゲンは身体の中で血栓(血の塊)を作りやすくします。さらに、卵胞からは血管から水分が抜けやすくなるような信号が送られます。

エストロゲンの作用と、血管内の脱水で血液が濃くなり、ダブルの作用で血栓ができやすくなってしまいます。

③卵胞からは血管から水分が抜けやすくなるような信号が送られる

この作用で血管内の水分が肺やお腹の中に漏れて、肺やお腹の中に水が溜まります(胸水、腹水が溜まる)。すると呼吸困難となったり、気持ち悪くなります。

以上のような作用によって、お腹が膨れる、気持ち悪くなる、腹痛、呼吸困難などの症状が出現します。重症化すると死亡する例も報告されています。

排卵誘発剤を使用中あるいは使用後でも(排卵誘発剤使用終了後、10日以上経ってから症状が出現する場合もあります)、これらの症状が出た場合にはかかりつけ医に受診しましょう。

2-2. 多胎妊娠

自然な状態では1周期に排卵される卵子の数は1個です。しかし排卵誘発剤を使用すると、たくさんの卵胞が育つため複数の卵子が排卵される場合があります。

双子と聞くと良いように思えますが、2人以上の赤ちゃんを妊娠することは非常に危険であることがわかっています。

具体的には、妊娠中の流産、早産、妊娠高血圧症候群、貧血、子宮内胎児発育遅延(赤ちゃんの体重が増えない)など、大きなリスクとなるのです。

下にそれぞれの排卵誘発剤と多胎妊娠率の関係を示します。

自然 クロミフェン レトロゾール hMG/FSH製剤
多胎妊娠率 1% 7-12% 5-10% 10-20%

hMG/FSH製剤についてはFSH低用量漸増法(少ない量のFSHで慎重に排卵誘発する方法)で排卵誘発した場合の多胎妊娠率は5.7%という報告があります。

2-3. クロミフェン 、レトロゾール、hMG/FSH製剤それぞれに特徴的な副作用

①クロミフェン

クロミフェンには抗エストロゲン作用があります。そのため、子宮頸管粘液を減らし、子宮内膜を薄くしてしまう副作用があります。

子宮頸管粘液が減ると精子が子宮の中へ進入しにくくなります。子宮内膜が薄いと赤ちゃんが着床しにくくなります。

 

②レトロゾール

副作用と言うのはやや変かもしれませんが、国から排卵誘発剤として正式に承認されているわけではないため、使用によって重大な問題が発生しても救済制度が使用できない場合があります。

 

③hMG/FSH製剤

閉経した女性の尿から作成されているため、未知の感染症のリスクがあります。

遺伝子組み換えFSHの場合はそのような問題はありませんが、価格が高いです。

3. 排卵誘発剤の費用の目安

排卵誘発剤の費用について説明していきます。

下の表にそれぞれの治療薬のおおよその費用を示しました。

例えば、クロミフェンは1周期で、生理5日目から5日間50mgを内服するので、50mg×5日分の費用を表示しています。

レトロゾールは最初に処方する量2.5mg5日間分の費用です。

hMG/FSH製剤やrecFSH製剤は人によって注射量が違うため、ここでは単位あたりの費用を載せています。

ここに、病院ごとに若干の値段の違いや、診察料、エコー検査費などが上乗せされます。

クロミフェン レトロゾール hMG/FSH製剤(75単位あたり) recFSH  (900単位あたり)
費用 550円 1500円 1500-3000円 50000円

 

まとめ

排卵誘発剤の種類について簡単にまとめます。

①クロミフェン→内服薬。脳にエストロゲンが少ないと錯覚させて卵胞発育させるホルモンを分泌させる。

②レトロゾール→内服薬。乳がんの治療薬だった。排卵誘発剤として正式に承認されていないが、医学論文では有効性が証明されてきている。

③ゴナドトロピン→注射薬。価格が高い、使い方を間違えると副作用が重いなどの欠点があるが、直接卵胞発育させるというシンプルな方法のため効果も強力。

 

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