梅毒について知りたいあなたへ。
近年、日本では梅毒が流行しています。
梅毒と聞くと、昔の性感染症と考えがちですが、実は日本ではどんどん感染が広がっています。
梅毒は初期症状が出にくく、なかなか感染したと気づきにくい病気です。
しかも梅毒に感染している人の多くがHIVも同時に感染していると言われており、要注意な性感染症と言えます。
今回は梅毒の感染経路、症状、治療法などについて徹底的に解説していきます。
1. 梅毒の原因と感染経路
原因は梅毒トレポネーマという病原菌です。
梅毒トレポネーマは、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。
そのため、性的な接触(粘膜や皮膚と直接接触すること)が主な感染経路です。
他にも、梅毒に感染している母親から妊娠・出産時に子供に感染すること(先天梅毒)があります。
梅毒トレポネーマは、傷口から出てくる透明な液体や、精液、腟分泌液、血液など、体液に含まれています。
梅毒が感染した体液が、粘膜や傷口などと直接接触することで感染します(実際には、感染経路の多くが、性器や肛門、口などの、粘膜を介する性的な接触)。
最も有効な予防方法はコンドームの使用です。
コンドームによって精液、腟分泌液、血液などの体液が、粘膜に触れることを阻止できます。
オーラルセックスでも梅毒は感染しますので、オーラルセックスの時からコンドームを使用すれば、ほぼ感染を防ぐことができます。
ただし、コンドームに覆われていない部分に傷口あって、そこに体液が付着した場合には感染の可能性があります。
2. 梅毒は症状がないこともある!?初期症状を逃さずチェック!
では、もし感染した場合、どんな症状が出てくるのでしょうか?
梅毒は感染してから、時間が経つにつれて少しずつ多彩な症状が出てくるのが特徴です。
梅毒第I期:感染後約3週間
感染が起きた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)に硬い潰瘍ができることがあります。
この潰瘍は4-6週間で小さな痕を残して消えてしまいます。また、痛みもないため気づかれにくいのが特徴です。
股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。
この時期は感染力が強く、他の人に感染させやすいです。
梅毒II期:感染後数か月
感染して3か月以上が経つと、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれ、発熱や頭痛、食欲低下をきたします。
さらには、痒みを伴わない赤い発疹が全身に出ます(バラ疹)。
バラ疹は治療をしなくても消えたり再発したりを繰り返すことがあります。アレルギーや風しん、麻しんなど他の感染症に間違えられることもあります。
また、鼠径部のリンパ節だけではなく、首や脇のリンパ節も腫れることがあります。
梅毒第Ⅲ期:感染後数年から数十年
感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。
また、大動脈炎、大動脈弁逆流症、大動脈瘤などのお心臓、血管の病気が生じることもあります。
この時期は梅毒の感染力はなくなっています。
先天梅毒:妊娠中に母体が梅毒に感染した場合
妊娠中に妊婦が梅毒に感染していたり、梅毒に感染している最中の女性が妊娠した場合に、赤ちゃんに梅毒が感染します。
胎盤を通して梅毒が赤ちゃんに感染すると、胎児死亡や出産後に梅毒疹、軟骨炎などの症状が起こります。
梅毒トレポネーマが胎盤を通過するのが、妊娠16週頃と言われており、その前に妊婦に梅毒の治療を行うことが母子感染予防に必須とされています。
現代では、妊娠初期検査(妊娠10週前後で行う検査)で梅毒の感染有無が判明するため、ほとんどの妊婦が梅毒の治療を受けることができています。
3. 梅毒を疑ったら?検査と治療法について
梅毒の症状が出てきたり、思い当たる節があるなら、すぐに検査に行きましょう。
梅毒を疑った場合、病院では以下の2種類の検査を採血で行います。
①TP抗原法(TPHA)=梅毒トレポネーマの抗原を用いる方法
②脂質抗原法(STS)=非特異的な脂質抗原(カルジオライピン)を用いる方法
この2つの検査を組み合わせて評価します。
TP抗原法は梅毒自体の抗原を確認するため、梅毒感染の証拠となり確定診断に必要です。
脂質抗原法は、治療によって数値が変化し、病気の進行の程度や治療効果の判定に有効です。
梅毒感染後、3-4週間でSTSが陽性となり、 2-3週間遅れてTPHAが陽性となります。
そのため、2種類の検査を組み合わせることで、いつ梅毒に感染したのかを推測することも可能です。
TPHA陰性 | TPHA陽性 | |
STS陰性 | 梅毒感染なし 感染して間もない時期 |
以前、梅毒に感染していたことがある |
STS8倍以下 | 梅毒感染初期 偽陽性 |
梅毒感染中 以前、梅毒に感染していたことがある |
STS16倍以上 | 梅毒感染初期 | 梅毒感染中 |
梅毒の治療には抗生物質を使用します。
日本産婦人科学会のガイドラインで治療方針が明示されています。
梅毒第Ⅰ期の場合
サワシリン錠250mg6錠分3(つまり、サワシリン1500mgを朝、昼、夕の3回に分けて1回500mgずつ内服する)を2-4週間使用します。
※ペニシリン系の抗生物質にアレルギーがある場合→ミノマイシン錠100mg2錠分2(つまり、ミノマイシン200mgを朝、夕の2回に分けて1回100mgずつ内服する)を2-4週間使用します。
梅毒第Ⅱ期の場合
サワシリン錠250mg6錠分3(つまり、サワシリン1500mgを朝、昼、夕の3回に分けて1回500mgずつ内服する)を4-8週間使用します。
※ペニシリン系の抗生物質にアレルギーがある場合→ミノマイシン錠100mg2錠分2(つまり、ミノマイシン200mgを朝、夕の2回に分けて1回100mgずつ内服する)を4-8週間使用します。
梅毒第Ⅲ期の場合
ビクシリンカプセル250mg8錠分4(つまり、ビクシリン2000mgを朝、昼、夕、寝前の4回に分けて1回500mgずつ内服する)を8-12週間使用します。
※ペニシリン系の抗生物質にアレルギーがある場合→アセチルスピラマイシン錠100mg12錠分6(つまり、アセチルスピラマイシン1200mgを6回に分けて1回200mgずつ内服する)を8-12週間使用します。
治療判定として先述のSTS検査を使います。
抗生剤で治療完了後、もう一度採血してSTSが8倍以下になり、かつ症状が消えた場合に治癒と判定します。
また、医師は梅毒と診断が確定した場合には7日以内に年齢、性別、その他厚生労働省令に決められた項目を、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならないとされます。
陳旧性梅毒(昔梅毒に感染していたけれども今は治癒している)の場合には届出は不要です。
[box03 title="梅毒のまとめ"]体液が粘膜や傷口に触れると感染
コンドームが感染予防に有効
痛みを伴わない硬い潰瘍やバラ疹を要チェック
治療は抗生物質[/box03]